今住んでいる山を切り開いた家の裏手にMt.Arthurという標高1190mの山があるとホストより教えてもらった。
オーストラリアにやってきてからいわゆるbush walkingというのをやったことがなかったので翌日にでも登ってみたいと申し出たところすんなり許可が出た。

年に1~2回は登頂するというホストによると家から登山口まで約1時間かかり、登山口から頂上まで登って再び登山口まで戻ってくるには5時間かかるらしい。そして再び登山口から家まで戻ってくるのに約1時間かかるから少なくとも7時間はかかるだろうという見通しらしい。

正直そんな本格的な登山など日本にいる時にもほとんどやった事がなかったので登りきれるか不安であった。ただホストからは頂上に登り切るのが目的ではなく楽しむ事が一番重要だと言われ、充分楽しんだら途中であろうが引き返してきなさいと助言を頂いた。

また今回のこの行動の目的は上に書いた事だけではなく、ここに長年住むホストと同じ光景を見たり体験したりする事で大げさかもしれないが気持ち的に同化できるのではないかと思ったのだ。
その場所に長く住む人間には何らかの理由というものがあると思う。それを言葉で正確に全て表す事ができない場合も往々にしてあるだろうが、それを知る為には同じ風景を見たり聞いたり体験したりする事も私は重要なのではないかと思ったのだ。


能書きは以上にして、前日は睡眠だけは確保しようと夜10時にベッドに向かい翌朝は8時に家を出た。
まずは登山口を目指すわけであるがこれが意外ときつい。ほとんどけもの道のようなところを歩きアップダウンもそれなりにあったのでかなり汗をかいた。

登山口へは1時間もかからず45分程で着いたが登山口の目印であるこの看板登山口看板
を見つけられず行きすぎてしまい30分程時間をロスしてしまった。

そしてようやく登山開始。いきなり傾斜のきついところから始まり再び大汗をかきながら登ってゆく。

途中大木が横たわっていて木を跨いだり体をかがめないと通れないところもあったりとなんだか気分は藤岡弘、のようである。
道を塞ぐもの4

道を塞ぐもの3

道を塞ぐもの2



約1時間程登ったところで誰かが作ったと思しき人口の休憩所が設けてあったので一旦ブレイクする事にした。もってきたチョコレートで糖分を摂取し水を500ml程飲んだ。
休憩所

休憩所でのチョコ

多分15分程休憩していたと思うが汗が風に冷やされて体が冷えてきた為慌ててジャケットを羽織り再出発した。しかし再び大汗をかいてきたのでジャケットは1分程度でまたお役御免となった。

この休憩所以降は岩がごつごつと足場に見られるようになり景色も少し変わってきた感じがした。しかし依然として周りは木々に囲まれており開けた景色は一向に見えてこない。
岩場の多い道

登山口まで

それどころか木々の間からも景色が全く見えないので段々ストレスが溜ってくるのと同時になんとしても頂上に登ってパノラミックビュー(全景)を見てやるという気持ちになった。基本負けず嫌いなのである。

さらに登ってゆく。基本登山道にはこのような目印があり迷う事はない。
目印

この目印が見つけられない場合は自分が迷っている証拠になるので、言ってみれば命綱のようなものである。

休憩所からさらに40分程だろうか。ひたすらに登っていると少し開けたところに出たのである。
開けた頂上手前

ついに頂上か!?と気分が高揚したが早とちりだった。
小さな小屋を発見し中に入ると山の地図やこの山に関する情報が書いてあるだけであった。
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しかしよーく地図を見てみると今自分は標高1000m付近にいるらしい事が分かったので頂上までもう少しだと気合を入れなおし再出発した。

あと少し。。。
目印2


あと少し。。。
頂上まであと少し


ん!?
おっ少し光が
登山口まで2


おおぉ光が強くなってきた!
頂上手前



そして、、、
おぉぉぉぉぉ!!!!!
頂上3

頂上

頂上4




ようやく頂上についた。いや正確に言うと頂上までもう少しのところであるがそんなのはもはやどうでもよかった。写真をクリックして頂ければ拡大されるので少しは感動は伝わるかもしれないが、やはりこの目で見た景色に勝るものはない。
目的の箇所(全景が見える場所)までこれた事に対する満足感とそれまで一切景色が見えなかったストレスが一気に解放された事も相まってここ最近にないぐらいテンションが上がってしまった。

叫びたい放題叫んだ。圧倒的なまでに気持ちがよかった。

もう言葉で説明する必要はなく登りきった人間だけにしか味わえない快感だと思った。ここまで気持ちがいいとは思わなかった。負けず嫌いな性格が功を奏した瞬間である。

岩に腰かけ持ってきたサンドイッチとリンゴを食べた後は何も遮るもののない空間で風と一体になったような気になりながら目を閉じて少し横になった。
私の他に登山者はいない。人気の少ない場所というのはオーストラリアにきてからは慣れているがおそらくこの時は半径100~200M以上に渡って誰もいなかったのだと思う。何も人工の音も聞こえずただただ吹き付ける風の音に身を置いていると自然と地球に対して畏怖の念を抱いた。

頂上付近には30分程いた。その後もちろん帰路についたが帰りはほとんど事務作業のようなものであった。いかにケガなく安全に帰るかという事だけに集中した。
昼の2時過ぎに家に着き合計6時間程で帰ってこれた。途中登山口の看板を見逃したりする事がなければもう少し早かったに違いない。

興味本位で唐突に言いだした今回の山登りではあったが何でもチャレンジすれば意外とできてしまうものだ。それと同時にここに25年以上住み続けるホストの理由も垣間見れた気がする。