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Black Fellaという言葉をご存知でしょうか。

Black Fellaというのはオーストラリアに住むアボリジニ(原住民)を指す言葉だそうでしてその言葉の響きから差別用語かな?と思ってしまいました。

自分が差別用語かどうかを判断するまでの知識も見識もなく確信はないのですが、初めてその単語を使用しているのを耳にした時は少しどぎまぎしてしまいました。

こちらの記事で紹介したHanna Rachel Bellさんというフェミニストの方と共に生活していた時に彼女が親しみを込めてアボリジニの友人達を呼ぶ時に使用していましたので特に差別だとかそういう感情がないのだろうと察します。

Hannahさんは長年に渡ってアボリジニと共に生活をした経歴がありまして、それに関連した本も書いてらっしゃいます。滞在していた時に彼女の上梓した本を数冊お借りして読んでみたのですがアカデミックな英単語も多く当時(今も)の自分にはスラスラ読み進める事はできませんでした。ただ口頭で話を聞いている限りではとても興味深い内容だったように思います。

ちなみに「Black Fella」側からは白人の事を「White Fella」と呼ぶそうです。

一般的な知識としてこの「Black Fellas」は約4万年前にまだ地続きだったと思われるオーストラリア大陸にやってきて長い年月を経て広大な大陸に住み着いたと言われています。

自分が彼らに畏敬の念を感じる部分は水があるのかどうかも分からない大陸の中央部分(年間降水量が50mm以下)だとか、未だに道路の舗装状態も良くないようなアーネムランド(カカドゥ国立公園をさらに奥に行った場所)に住み着いたりと、科学的知識などない数万年前からほぼ動物的勘だけを頼りにしながら、世界最大にして最強と言ってもいい難攻不落の「大自然」を相手に今日まで共生してきた事です。

あるBlack Fellaを題材にした映画を見た時にそれを強く感じました。

The Tracker」(追跡者)というタイトルの映画でして、白人女性を殺害したあるアボリジニの男を捕える為に白人警官数名がその男を追跡する物語です。


彼ら白人はそのアボリジニの男がいる場所まで自力で到達できるだけの”知識”がありませんので案内役として同じくアボリジニの男を雇います。白人達はその男を案内役に殺人犯を捜索するのですが、道中延々と荒涼とした道無き道を進んでいく内に徐々にストレスが溜まっていき案内役であるアボリジニの男に厳しく接するようになります。

ですが道なき道も半ばまでくればこの案内役の男がいないと引き返す事もできないし殺人犯を見つける事もできないという状況に白人達は追い込まれてしまいます。

逆に案内役のアボリジニの男にとってはどんなに荒れ果てている場所でも”自分の家”ですからいとも簡単に水の在り処を見つけたり、常人の倍はあろうかという視力や驚異的な聴力でもって白人達が気づかない段階で危険を察知したり、またほんの些細な小石の散乱状態を見ただけで数時間前に人が歩いた痕跡を発見して次に進むべき道を見つけるなど驚異的な能力を発揮します。

このアボリジニの男はどんなに虐げられても飄々とした態度で白人達をいなし続け、それがまた白人達にとってみればストレスが溜まる要因にもなるわけですが、白人達はこの案内役がいないと生きて帰る事ができないのでこの男を処分しようにもできないわけです。

そしてストレスが溜まっている白人達は所期の目的である殺人犯の確保とは関係なく道中見つけた原住民を無差別発砲して殺してしまったりとかなり追い込まれていきます。

そんな光景を静かな目で見つめていた案内役であるアボリジニの男は白人達に察知されないよう、原住民の仇討とばかりに彼らを一人づつ殺していきます。

その殺し方も(銃とかの)西洋的殺し方ではなく、アボリジニが長年使用してきた槍を使用して急所をついたり、自然に生息する草などを調合して作った”天然の睡眠薬”を使って警戒心の強い白人を眠らせ、すやすや寝ている間にロープを首にかけ、自然の摂理を利用して徐々にロープが吊り上がっていくよう細工をして白人が眠りから覚める事もなくこの世から葬り去ってしまいます。

この白人達を”処分”したのに伴い映画は終了するわけですが、歴史的に白人達に虐げられてきた歴史を持つアボリジニが西洋由来の武器や知識を使わずに白人達を処分してしまう光景には過去の虐殺に対する抗議や風刺的な意味があるようにも感じるのと同時にアボリジニの数万年にも及ぶ世界最古に等しい知識を使って人を殺めたり、水を発見したりするシーンを見た時は自分含む現代人には到底及ばない知識があるのだと強い畏敬の念を抱かざるを得ませんでした。


ちなみにこの映画の主人公である案内役であるアボリジニは本当のアボリジニの俳優でDavid Gulpililという方です。この人は以下に紹介するアボリジニ映画にも出演されておりその世界では唯一無二の存在とも言えるような感じの人のようです。

この「The Tracker」以外にもBlack Fellaの世界を知る映画やドラマを見ましたのでご紹介します。



・「Rabbit Proof Fence」(邦題:裸足の1500マイル)



これは1900年代から1960年頃までオーストラリア政府主導で行われていたほぼ誘拐といってもいいお節介政策によってアボリジニの家族から子供を強制的に連れ出してきて西洋式教育をうけさせたり西洋家族の一員に組み入れた歴史を題材にした映画です。その世代の事をLost Generation(失われた世代)と言うそうで、数多くのBlack Fellaの子供が家族から強制的に引き離されてしまったそうです。そしてこの映画はフィクションではなく実話だそうでして実際に強制的に収容された施設から逃げ出す事に成功した本人の映像も出てきますのでより一層現実感が増しますし、個人的には西洋人が抱く優生思想みたいなものが悪い方向に出てしまった負の部分を感じれる映画じゃないかと思います。



「Redfern Now」


2012年からオーストラリアの国営放送ABCで放送されているドラマシリーズです。タイトルからも窺えるようにシドニーのRed Fernという場所が舞台になってまして映像にはRed Fernの町並みも実際に使われてますので実際に街に行った事がある人には「おおっ見たことある」となったりするかもしれません。

このドラマでは表向きマルチカルチュラリズムを標榜し大らかに移民を受け入れ続けている差別の少ないオーストラリアのちょっとした闇のような部分を垣間見る事ができるような気がします。実際にBlack Fellaが被っている差別や社会問題を忠実に再現しているようでして、自分のような部外者が背景事情を知るには良いドラマだと思います。

10話以上ある中でも2話しか見てないんですがどちらとも興味深かったです。
その内の一つはアボリジニの血を引く16歳の少年がscholarship(多分返済不要の奨学金)を受け取る事が決まり進学校へ入学するところから始まります。

その学校ではオーストラリア国歌を毎朝生徒全員が歌わなければならないという規則があって先住民の血を引くその高校生は、先住民を虐殺した侵略者を讃える賛美歌である国歌を歌う事ができずにいます。それを先生から咎められ翌日以降はちゃんと歌うように高校生を説得し、家に帰ると高校生は歌の練習をします。ですが父親から”賛美歌”を歌うのは耐えられないのでやめろと言われ翌日以降も高校生は国歌を歌わずに過ごします。そうしているとある日ついに学校長の堪忍袋の緒が切れて、「これ以上校則に従わないようなら奨学金を打ち切る」という勧告がなされますが、エリート校に通わせたい高校生の”教育ママ”を除いて高校生とその父親は勧告を突っぱね奨学金の打ち切りが決定してしまいます。

それでも同じ進学校に進んだBlack Fellaの血を引く同級生が抗議の意味を込めて国歌斉唱を一斉に拒否したりと高校側と対立します。最終的に知り合いのカメラマンを利用して学校側がその高校生を退学させる瞬間をパパラッチさせて新聞で記事に載せる事で事を大きくして世論の声を味方につけた高校生側が勝利しそのまま高校生活を続ける事ができるという話しなのですが、Black Fellaに対する差別みたいなものが普段の日常にも存在している事が分かる作品だと思います。


まだまだBlack Fellaを題材にした映画やドラマはありますし自分ももっと多くの作品を見てみたいです。多分というか絶対にウーフやらヘルペックスを使って地元民と生活をしてなければこのような作品を自ら観る事はなかったでしょうからいい機会になりました。今後オーストラリアに永住する場合にも知っておくべき問題だと思いますし早い段階でBlack Fellaのオーストラリアでの位置づけみたいなものが知れて良かったと思ってます。この記事を読んで興味が湧いた方はオーストラリアの図書館でもDVDが借りられると思いますのでここに強くご覧になられる事をおススメする次第です。