オーストラリアにセカンドビザで戻ってきてちょうど3ヶ月が経過した。2月16日からは約1ヶ月近く滞在したLaunceston近郊を離れ州都Hobartの南約40kmのHuonvilleにあるHuon bush retreats(山奥にあるキャンプ施設兼保養所のようなところ)にてwwoofをしている。
Launcestonからはバスを2回乗り継ぎ一気に200km以上南下した形になる。
ここにはwwoofを通して来ているが野菜畑があったり牛や豚などの家畜類がいるわけではない。
この施設はPaulとMichealの男性二人により管理されている。
彼らは同性愛者として結婚している事を初日に知ったが、来る前に男性名が連名であったのである程度は予想していた。
それまでに同性愛者の人と面と向かって喋った事がなかったので正直自分の中に若干の不安のようなものがあったが会ってみたらそんな不安などすぐに消え去った。
多分何かしらの偏見が自分の中にあったのだと今になって思う。
自分の事を棚に上げるわけではないが宗教や文化、人の趣味嗜好に至るまで自分にとって未知のものというのはいつだって偏見が抱かれがちだと感じる。
いろんな人間や文化を知る事で自分の中の偏見や差別意識は根本から消え去っていく。
少なくともオーストラリアに来てからの自分は常にそんな感じだ。
Michealは普段街に出て働いている為もっぱらPaulと仕事や生活をする事になる。彼は過去に5年半という時間をかけて自転車でヨーロッパから中国までのユーラシア大陸を回ったことがあるらしくおもしろい話がいくつも聞けた。
パキスタンから中国新疆ウイグル自治区に入国した時は国境間が100km以上空いており厳しい自然環境の為に住む人は見当たらなかったそうだ。
それと中国の西側というのは一般的に抱く中国人のイメージとは違っていた。
会話がトルコ語(Turkish)・宗教はイスラム・ただし文字は漢字を使うという中東と東アジアの境のようなところらしい。
地図で確認するとパキスタンとの国境沿いには標高5000mを超える山脈があり、彼はこの山脈を超え誰もいないタクラマカン砂漠を抜けて新疆ウイグル自治区のTurpan(以下ターファン)という場所に辿り着いた時には海抜は-130mにまで下がっていたそうだ。
彼はターファン到着時にはスーパーマンになったような感じがしたと笑いながら言っていた。
ターファンに来る前までは高地に順応した身体になっている為少ない酸素でも生きていけるようになっていたのがターファンは海抜以下に位置しており充分過ぎる程の酸素を取り込める為だ。
当時の写真を見せてほしいと彼にせがんだところほとんど写真は撮っていないという答えが返ってきた。超貧乏旅だった為カメラに回すお金がなかったのだそうだ。自転車にテントを乗せてヨーロッパからシルクロードを抜けて香港まで旅をしたのだから様々な景色を五感で感じた旅だったのだろうと想像する。
旅の大先輩の偉業を写真で目にする事ができないのがここへ来て唯一悔やまれる事だったかもしれない。
PaulとMichealはこのRetreatを10年以上経営しており世界各国からやってくるゲストを相手にしてきた。もっぱらPaulがゲスト対応しているが彼はただ単に客を迎え入れるだけでなく各国の文化的側面や民族的傾向を学ぶ事も忘れてはいない。彼の学ぶべき点はそれを自分のビジネスにきちんと生かしている点だと感じる。
中国人に関する考察は聞いていて面白かった。中国人といっても一括りにはできないが彼の言う中国人はsave their face(メンツを保つ)の為ならお金は厭わない民族なのだそうだ。
簡単に例を出すとツアーで(このretreatではなく別のホバートとかのホテルに)やってきた中国人団体客のまとめ役のメンツが(ホテルの手配が取れてなかったりで)潰れそうな時、Paulが多少高い値段をふっかけて宿を提供しても中国人はお金を惜しんだり文句を言ってくるどころかメンツを保てるので感謝してくるそうだ。
彼は謙遜して別に深い洞察はしていないと言ったが日本人に対する民族的傾向→メニューや詰め合わせを重用しオリジナリティを持たない、皆と同じでないとだめ、権威主義(大阪人を除く)などの分析はあながち間違ってなかったので中国人に対するそれも恐らく大方当てはまっていると思う。
中国人も日本人も旅行をする時は行程表通りに進まないと気が済まないらしい。もっとも日本人はここ20年でリラックスする事を覚えたようで中国人ほどはせかせかしなくなったというのがPaulの分析による最近の日本人の傾向なんだそうだ。
経済は落ち目だが旅を楽しむ日本人が増えているという事だろう。喜んでいいのかどうか複雑ではある。
ここでの仕事はとてもflexible(融通の利くもの)で多様なものだった。ある日は裏山に登って山道整備をしたり、ある日は薪割りをしたり、ある日はhousekeepingをしたり、ある日はコンポストトイレの交換の過程を見せてもらったり、ある日は山から引いている水パイプの修理をしたり。
これはPaulの気遣いに依拠するところが大きい。彼は意識的に毎日違う仕事を振り分けてくれwwooferが単調な仕事に飽きないよう工夫をしてくれた。仕事をする時は彼と一緒だったのも一人で無味乾燥気味に陥らないようにする為の配慮が感じ取れた。
1日の大半は行動を共にする為必然的に会話量も増え彼らの事を知る機会も多くなった。
これまで10件近くwwoofをしてきてこのあたりの事を意識的にできているホストはあまり多いようには感じない。もちろん彼らにも生活があるし振分けられる仕事も場所によっては多くないので限界があるのも納得がいく。
もしかすると私の気付かない部分でホストが気を遣ってくれていたのかもしれない。
しかしホストの事をほとんど知らないまま去った場所もあるし喋る時はご飯時だけというやや物足りないところがあったのも事実ではある。
それが良いか悪いかは別として数を回ってみないと見えてこない事であるのは間違いない。
何をもって納得とするかは人それぞれだがホストとの交流という意味で納得のいかないwwoofライフを送っている方がいれば是非とも数を回ってみる事をお勧めする。
それとここではセカンドビザ取得要件が満たせないので過去に滞在した日本人は一人だけだったそうだ。それよかアジア人そのものもほとんど来たことがないらしい。タスマニアに来てからここへ来るまでに訪れた4件中3件はビザ要件を満たせるので日本人を過去に大量に受け入れた事があると言っていた。ビザ目的以外でwwoofをするワーホリなんてマイナー中のマイナーなんだと感じる。
来る3月2日に次のホスト宅へ移動する。
ここではほぼ100%に近い満足度の生活を送れた。一重にそれを提供してくれたPaulに感謝するしかない。
因みに私の滞在中にこのRetreatのプロモ用に撮影があり私もcrazy Japanese tourist(Paul命名)として後ろ姿だけだが出演している。
CM用とWeb用があり明日3月から一ヶ月間テレビで流れるらしい。オーストラリアにいる方には注意深く見て頂きたい(笑)
撮影当日の事は次の記事で書いているのでそちらも見て頂ければ大体の雰囲気は伝わるかと思われる。
写真はこの場所で飼われているwallaby
滞在していた場所。chimney(煙突)からは煙が