理想の働き方生活とは


前回のHuon bush retreatと同じHuonville近郊にあるホスト先での滞在が先日終了した。これでちょうど10件のウーフ・Helpx先を訪ねた事になる。

記念すべき10件目のホストはceramic(陶磁器)作製を生業としており、ハンガリーとフィンランドからの移民夫妻がホストだった。

彼らの職業はceramic artistである。洋の東西を問わず何かのartistとして生計をたてるのは楽ではないと聞く。事実このホストも例に漏れないとホストマザー自ら証言する。

儲かるアーティストというのは”政治”がうまい人の事だとマザーから聞いた。この世界ではアート作品の上手い下手もさることながらやはり業界内で顔が利かないと大きな個展を開いたりそれなりの生計をたてるのは難しいそうだ。

ホストの住んでいる家や車等を見ていると失礼ながら裕福な暮らしぶりには見えなかった。

ただ彼らの生活はお金ではない何か違う原理で動いているように感じ取れた。

それを強く感じた理由は10件のウーフ滞在の中で一番笑いに溢れた生活をし、前回のHuon bush retreatのものとはまた違った充実感があった事が大きく影響している。

まず彼らのもとを訪ねてくる友人の多さに驚く。偶然だったのかこれが日常だったのかは分からないが自分の滞在中軽く数えて10〜15人以上は新しい人に出会った。職業も同じアーティストから医者、退職者、絵本書きの人までいた。

social(社交的)な機会が多いオーストラリアとはいうもののパーティでもない限りここまで多くの人が訪ねてくる家庭は初めてだった。一重にホスト夫妻の飾らない人柄に惚れてる人々が多いのだろうと推測する。ホストは夫婦という枠に囚われずお互いが無二の親友のようにも感じる。そういった自然と溢れ出てくる邪鬼のないオーラのような雰囲気が私含め他人を魅了しているのかもしれない。

また彼らの話しぶりや表情から暗い話しは聞こえてこない。日常に影を落としかねない家庭事情がある事もホストから聞いたがホストファザーは常に冗談を言って場を和まそうとする。

初日にファザーからwe try to laugh(常に笑っているようにする)と言われた一言が頭にずっと残っていた。ニヒルに笑うとか無理して笑顔を作るという事ではなく、積極的に良い雰囲気を作るという意味と私は捉えた。それに合わせたわけではないが私も腹の底から笑う事が数回あった。

この2ヶ月間、間断なく次から次へホストを訪れていたので少し疲れていた部分もあったが随分助けてもらったように思う。別に無理して笑うとかするわけでもなく自然とリラックスする事ができた。

またここでは働く意義について考えさせられた。

上に述べたようにホスト夫妻は特に裕福な暮らしぶりには見えなかった。実際の懐事情というのは知るすべもないが一緒に生活していればおよそのあたりというのはつく気がする。お金というのはあるに越したことはないし、稼ぐ術を知っていればそれに越したこともない。ただやはりお金だけでは幸せにはなれないのだろうしお金がなくても幸せそうに生活しているこのホスト夫妻を見た事で自分の中の何かに変化をもたらした気がする。

滞在中はphysical work(肉体労働)を積極的に行ったがそれは体を酷使した後に飲むお酒やご飯がとにかく美味いからだ。ご飯が美味ければ美味いほど幸福度が上がった。特に採れたての野菜を毎回食事に使う事で自分が食べるものが常に新鮮だった事も大きく影響している。

仕事が終われば楽しくおしゃべりして好きな本でも読んで夕暮れ時にはスズ虫の音色を聞きながら一日が終わる。

またホストマザーがフィンランドからの移民である事も関連しているがこのホストはオーストラリアでは珍しく手作りのサウナを持っていた。タスマニアは寒暖差が時として暴力的になる。冷え込む夜が見込まれる場合はサウナを準備して私も2度ほどお世話になり、サウナを浴びた夜はよく眠れた。

そんな時間に追われない日がずっと続けば自分の中の幸せの価値観というものが自然と変わった気がする。

ホストは誰か他人の為に働くのではなく自分達の為に働くのだから辛くはないと言う。私もホスト夫妻の生活の一助となるべく必要とされる事(whatever needs doing)は積極的に行った。

自分はこの夫妻の家族というわけではないが自然と協力したくなった。何故そうなったかは彼らの飾らない人柄もあるが、自分が信頼されていると感じるか否かが関係しているように感じた。彼らは仕事や起床時間等にうるさい人達ではなくかなり私に裁量権を持たせてくれた。他の人はどうか分からないが自分という人間はあれこれ指示されるより自分任せにしてもらった方が仕事がはかどるような気がする。

ウーフの本やHelpxを見ているとunsepervised、without supervision(監督なし)で仕事をする事を求めるホストもちらほらいる。これまでに訪れたホストでも一人で仕事をする事は多かったが今までのそれとは何かが違う。それは自分の限られた稚拙な表現で表せるものではなくうやむやしたものになってしまうが私自身はこのホストから信頼されていると感じた。相手の表情や話し振り、気の遣い方である程度それは感じる。

他人をある程度信頼するのも重要なのだと思った。自分は信頼されていると分かれば粋に感じる人間のように思う。

もし自分がこのホストと同じ立場になったら果たして同じようにできるだろうかと考える。おそらく人を見て信頼の配分量を変える事になるかもしれない。ただ少なくとも一から十まで相手を信頼せずに束縛してしまうのは良くない。

人間が中心になって動いているこの世の中で一番難しい事の一つは相手を信頼する事なのかもしれない。今は多くの人間に会って自分の鑑識眼が養われているはずだ。簡単な事ではないから一歩づつ成長していけばいい。

ここでは自分にとって理想的な働き方や自分が気持ちいいと感じるポイントのようなものが多少分かったような気がする。自分が気持ちよく感じるポイントなどいくらお金があろうが誰に教えてもらう事もできない。それが少し分かっただけでも大収穫だ。

将来は自分の家にサウナを設置しているかもしれない。そんな事を想像しながらこの地を後にした。

写真はホスト手作りの竈。魔法陣グルグルに出てきそうな

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敷地内にあるこれまた手作りの灯籠のようなもの

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玄関先で育てられている葡萄。ポッサム対策でネットが張り巡らされている

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